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理想の生地が見つかる!アパレルOEM素材選定と開発5つの極意

アパレルブランドを運営されている皆様、またはこれからブランドを立ち上げようとされている皆様、こんにちは。テキスタイル(生地)の専門知識を持つOEMプランナーです。

日々多くのお客様からご相談をいただく中で、特に多いお悩みが「生地」に関するものです。「デザイン画通りのシルエットが出ない」「サンプルが上がってきたけれど、なんとなく安っぽく見えてしまう」といったご相談をよく承ります。

実は、服のクオリティの7割は「生地選び」で決まると言っても過言ではありません。どれほど優れたパタンナーが型紙を引き、熟練の職人が縫製したとしても、素材そのものがデザインや用途に適していなければ、理想の服は完成しないからです。

料理に例えるならば、生地は「食材」です。最高級のフレンチを作ろうとしているのに、スーパーマーケットの特売の食材だけでは、シェフの腕が良くても限界があります。逆に、新鮮で質の良い食材があれば、シンプルな調理法でも驚くほど美味しく仕上がります。

私たちOEMメーカーの役割は、単に工場を手配して縫うだけではありません。世界中から最適な「食材」を見つけ出す「素材のハンター」としての役割も担っています。日本国内の産地はもちろん、中国の広州や中大市場などの巨大な生地マーケットまで独自のネットワークを駆使し、あなたのブランドに最適な生地を調達します。

本記事では、アパレルOEMの視点から、市場に流通している「ストック生地」の上手な探し方から、世界に一つだけの「オリジナル生地(別注)」の開発手法まで、プロの素材調達術を余すことなくお伝えします。専門用語も分かりやすく解説しますので、ぜひ素材選びの参考にしてください。

極意1:「市場生地(ストック)」と「別注生地(オリジナル)」の使い分け

理想の服を作るために、まず理解しておきたいのが生地調達の2つの大きなルートです。それが「市場生地(ストックオペレーション)」と「別注生地(オリジナル)」です。

この2つはどちらが優れているというものではなく、ブランドの規模やアイテムの目的によって使い分けることがビジネス成功の鍵となります。それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

項目 市場生地(ストック) 別注生地(オリジナル)
定義 問屋やメーカーが在庫として持っている既製の生地 糸、織り方、色、加工を指定してゼロから作る生地
メリット ・1反(約50m)や着分(数m)から購入可能
・即日〜数日で出荷され納期が早い
・実物を見てすぐに決められる
・ブランド独自の色や風合いが出せる
・他社との差別化が完璧にできる
・機能(撥水・防汚など)を付与可能
デメリット ・人気素材は他ブランドと被る
・色が既存の展開色に限定される
・突然の廃盤リスクがある
・ロット(最低生産量)が大きい
・納期がかかる(45日〜60日以上)
・開発コストがかかる
活用シーン テストマーケティング、追加生産、トレンドを追う小ロット企画 ブランドの顔となる定番商品、大量販売が見込める主力アイテム

市場生地(ストックオペレーション)の活用術
立ち上げ当初のブランドや、シーズンのトレンドを素早く取り入れたいスポット商品には、市場生地が最適です。日本の生地問屋や中国の生地市場には、膨大な種類のストックが存在します。「リスクを抑えて小さく始めたい」という場合は、まずストック生地の中から、ブランドのイメージに最も近いものを探すのが賢明です。

別注生地(オーダーメイド)の挑戦
一方で、「どうしてもこの微妙なニュアンスの色が出したい」「肌触りにもっとこだわりたい」という場合や、ブランドが成長してきて「他とは違う」というアイデンティティを確立したい場合は、別注生地の出番です。確かにロット(最低生産数量)は数百メートルから数千メートルと大きくなりますが、原価率をコントロールしやすくなるという側面もあります。

プロのプランナーは、これらを巧みに組み合わせます。例えば、ブランドの看板商品であるコートにはこだわりのオリジナル生地を使い、インナーのカットソーには質の良い市場生地を使ってコストバランスを取る、といった戦略です。最初から全てをオリジナルにする必要はありません。成長フェーズに合わせて使い分けていきましょう。

極意2:プロが教える「スワッチ(生地見本)」の取り寄せ方と見方

OEMメーカーや生地屋とのやり取りで最も重要なツールが「スワッチ」です。スワッチとは、生地を小さくカットした見本のことです。台紙に貼られているものや、ハンガーに吊るされているものなどがあります。

情報の伝え方で精度が変わる
お客様から「白い綿の生地を探してください」とご依頼いただくことがありますが、これだけでは何千種類もの生地が該当してしまい、提案が難しくなります。プロに依頼する際は、より具体的な「スペック」と「感覚」を伝えることが重要です。

具体的には以下の要素を伝えるとスムーズです。
・厚み(オンス): Tシャツならヘビーウェイトが良いのか、薄手が良いのか。
・透け感: インナーが必要なほど透けて良いのか、一枚で着たいのか。
・タッチ: カリッとした硬め(ドライタッチ)か、ふんわりした柔らかめ(ソフトタッチ)か。
・用途: 何を作るための生地なのか(シャツ用、パンツ用など)。

生地ネットワークの活用
私たちのようなOEM会社は、日本国内の産地(尾州のウール、遠州の綿、岡山のデニムなど)だけでなく、世界の繊維工場である中国・広州や中大市場とも連携しています。この膨大なデータベースの中から、お客様の要望に合致するスワッチをピックアップします。

確認時の絶対ルール:写真はNG
ここで一つ、非常に重要な注意点があります。生地選びにおいて、写真やモニター画面だけで判断するのは絶対に避けてください。モニターでは、生地の厚み、ドレープ感(生地のたわみ方)、微妙な色合い、そして何より「手触り」が分かりません。必ず実物のスワッチを取り寄せ、自分の手で触れて確認することが鉄則です。

混率と縮率の確認
スワッチを見る際は、デザインだけでなく品質データも確認します。特に注意すべきは「混率(素材の配合)」と「縮率(洗濯後の縮み具合)」です。
例えば、綿100%や麻素材は洗濯後に縮みやすい性質があります。この「縮率」を計算に入れずにパターン(型紙)を作ってしまうと、製品洗いをした後や、お客様が洗濯をした後にサイズが小さくなってしまう事故が起きます。プロは、生地ごとの縮率データを事前に確認し、縮む分を見越して少し大きめに縫製するなどの対策を講じます。

極意3:メンズ・レディースそれぞれの「素材の好み」を理解する

生地選びには、ターゲットとする性別によって好まれる傾向が明確に異なります。ユニセックスブランドであっても、この「素材の嗜好性」を理解しておくことは非常に大切です。

メンズの傾向:「スペック」と「経年変化」
一般的に男性は、素材の背景やスペック(仕様)を好む傾向にあります。「ヘビーオンス」「高密度」「旧式織機で織られた」といったキーワードに価値を感じやすいです。
触り心地としては、ドライタッチ(乾いた手触り)や、ガシッとした硬めの風合い、耐久性のある素材が好まれます。また、デニムやレザーのように、使い込むことで味がでる「経年変化(エイジング)」を楽しめる素材もメンズでは非常に人気があります。

レディースの傾向:「落ち感」と「肌触り」
対して女性は、肌に触れた時の感覚や、動いた時の美しさを重視する傾向があります。キーワードとしては「落ち感(ドレープ性)」「とろみ」「微光沢」などが挙げられます。
身体のラインを拾いすぎず、かつ美しく見せる柔らかい素材、例えばレーヨン混やキュプラ、シルクのような滑らかなタッチが好まれます。スペックよりも「着ていて心地よいか」「高見えするか」という感覚的な価値が重視されます。

ユニセックス素材の選び方
最近増えているユニセックスブランドでは、男女どちらにも受け入れられる素材選びが求められます。ここで重宝されるのが「ポンチ素材」や「高密度コットン」です。
・ポンチ素材: ジャージー素材の一種ですが、横伸びが少なく、ハリとコシがあります。スウェットほどカジュアルになりすぎず、適度な厚みと滑らかさがあるため、男女問わず清潔感のある印象を与えられます。
・高密度コットン: 細い糸をぎゅっと密に織り上げた綿素材です。適度なハリ感があり体型をカバーしつつ、上品な光沢があるため、メンズの「しっかり感」とレディースの「きれいめ感」の両方を満たすことができます。

極意4:オリジナルカラーを出す「ビーカー(Lab Dips)」の魔術

ブランドの世界観を表現する上で、「色」は形以上に雄弁です。市販の生地にある「普通のネイビー」ではなく、ブランド独自の「深く沈んだミッドナイトブルー」を作りたい。そんな時に行われるのが「ビーカー(Lab Dips)」と呼ばれる工程です。

ビーカー(Lab Dips)とは
ビーカーとは、本生産(反物での染色)に入る前に、小さな試験管やビーカーを使って少量の生地を染める試験のことです。別注生地を作る際、指定した色(PANTONEカラーや、切り抜きの色見本)に合わせて、染工所の職人が染料を調合します。

色の見え方は光源で変わる(メタメリズム)
ビーカーチェック(色確認)の際、プロが最も気を使うのが「光源」です。色は、太陽光の下、蛍光灯の下、電球色の下で全く違って見えます。これを専門用語で「メタメリズム(条件等色)」と呼びます。
「オフィスの蛍光灯の下では完璧な色だったのに、外で着たら色がくすんで見えた」という失敗を防ぐため、必ず複数の光源の下で色を確認します。ライトボックスという専用の機材を使うこともありますし、実際に窓際に行って自然光で確認することも必須です。

堅牢度(けんろうど)の確認
好みの色が出たからといって、すぐに生産OKとはなりません。その色が「落ちにくいか」を確認する必要があります。これを「染色堅牢度」と言います。
洗濯による色落ち、汗による変色、日光による退色、摩擦による色移りなど、様々な項目でテストを行います。特に濃い色は色落ちしやすいため、デザイン性だけでなく、品質基準を満たしているかのデータ確認を同時に行うのがプロの仕事です。

極意5:生地コストを抑える「要尺(ようじゃく)」と「取り都合」の秘密

良い生地を使いたいけれど、コストは抑えたい。この矛盾を解決するために、我々OEMプランナーは「要尺」と「取り都合」を計算します。

生地幅の魔法
要尺とは、1着の服を作るために必要な生地の長さのことです。ここで重要になるのが「生地幅」です。生地には主に110cm幅(シングル幅)や140cm幅(ダブル幅)などがあります。
例えば、同じデザインのパンツを作る場合でも、110cm幅の生地では2m必要だが、140cm幅なら1.5mで済む、ということが起こります。単価が安くても幅が狭ければ要尺が増えてコスト高になる場合もあるため、1着あたりのトータルコスト(用尺×単価)で計算する必要があります。

効率的な生産テクニック
生地を裁断する際、パズルのように型紙を配置しますが、隙間(廃棄部分)が多いとコストの無駄になります。これを「取り都合」と言います。
例えば、メンズのパンツとレディースのスカートを同じ生地で企画し、同時に裁断することで、半端な隙間に小さいパーツを入れ込み、生地の廃棄ロスを極限まで減らすといったテクニックもあります。生地を余すことなく使い切ることは、コスト削減だけでなくサステナビリティの観点からも重要です。

素材はブランドの「言語」である

ここまで、市場生地の選び方からオリジナル生地の開発、そしてコスト管理までお話ししてきました。生地は、お客様が服を手に取った瞬間、そして袖を通した瞬間に、ブランドの想いを肌で伝える「言語」のようなものです。

どれほど素晴らしいコンセプトがあっても、素材選びで妥協してしまえば、その想いは正しく伝わりません。逆に、こだわりの素材を使うことで、言葉で説明しなくとも品質の良さを雄弁に語ってくれる服になります。

良い生地との出会いは、良いOEMパートナーとの出会いから始まります。生地の知識が豊富なパートナーとならば、ロットの問題も、品質の問題も、アイデアと技術で乗り越えていくことができます。ぜひ、あなたのブランドだけの「素材」を見つけ出してください。

まずはあなたの「作りたいイメージ」をお聞かせください

メンズ・レディースを問わず、アパレルブランドの立ち上げや衣服のOEMでお困りの際は、ぜひオフィスアイにご相談ください。小ロットからの生産対応はもちろん、イメージ通りの生地が見つからない場合の素材開発まで、御社のブランドコンセプトに合わせた最適なプランをご提案いたします。

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