BLOG

【パタンナー監修】メンズ・レディース兼用のアパレルOEMで失敗しない!ユニセックスパターンの黄金比とグレーディングの壁

近年、ジェンダーレスファッションの台頭により、多くのアパレルブランドがユニセックスラインの展開に乗り出しています。しかし、その華やかなトレンドの裏側で、ある深刻な問題が進行していることをご存知でしょうか。それは「ただ大きいだけの服」が市場に溢れ、フィット感への不満から返品率が上昇しているという現実です。

多くのD2Cオーナーやデザイナーが直面しているのは、「メンズのSサイズをレディースのLサイズとして販売する」という安易な手法の限界です。人間の身体は、単にサイズを拡大縮小するだけでは対応できない複雑な構造をしています。

本記事では、衣服の構造を熟知したプロフェッショナルな視点から、解剖学に基づいたパターン(型紙)設計の真髄を解説します。メンズ、レディース、そしてOEM生産の現場における技術的な「壁」を乗り越え、ブランドのファンを増やすための具体的な解決策を提示します。これは単なる発注マニュアルではなく、長く愛される服を作るための技術論です。

なぜ「メンズ・レディース兼用」のOEMは難しいのか?身体構造の決定的違い

ユニセックスの衣服を作る際、最も大きな障壁となるのが男女の骨格構造の差異です。OEMメーカーに依頼する際、単に「男女兼用で」と伝えるだけでは、どちらの性別にとっても中途半端な製品が出来上がってしまいます。ここでは、プロのパタンナーが意識している解剖学的な視点を共有します。

解剖学的視点で見る「原型(マスターパターン)」の差異

服作りの基礎となる「原型(マスターパターン)」は、メンズとレディースで全く異なる理論で構築されています。この違いを理解せずにデザイン画を描くと、製品化の段階で必ず歪みが生じます。

まず、男性の骨格の特徴を見てみましょう。男性は一般的に鎖骨の長さがあり、肩幅が広く、肩周りの筋肉に厚みがあります。首の付け根から肩先にかけての傾斜は比較的緩やかで、僧帽筋の発達により首の周りもしっかりとしています。また、背中の肩甲骨周りの可動域を確保するために、背幅(せはば)を広めに取る必要があります。

一方で女性の骨格は、男性に比べて華奢であり、なで肩の傾向が強く見られます。最大の違いは「バストの厚み」です。女性用の原型は、バストの隆起を包み込むために、前身頃にダーツ処理や「いせ込み」といった立体的な操作が不可欠です。また、首そのものが細く、首の傾斜角度も男性とは異なります。

これらの差異を無視して単一のパターンでOEM生産を進めると、次のような不具合が発生します。

女性が男性ベースのパターンを着用した場合、肩幅が余りすぎてだらしなく見えるだけでなく、襟が後ろに抜けてしまう現象が起きます。これは、男性用の襟ぐりが女性の首に対して広すぎることと、バストの厚み分が考慮されていないため、前身頃が持ち上げられてバランスが崩れるためです。

逆に、男性が女性ベースに近いパターンを着用した場合、胸周りが平坦に設計されているため窮屈さを感じ、アームホール(袖ぐり)が食い込んで動きにくくなります。特に肩周りの筋肉が発達している男性にとって、女性特有のなで肩ラインは大きなストレスとなります。

男女の骨格とパターンの主な違い
部位 メンズ(Men's)の特徴 レディース(Ladies')の特徴
肩・首 肩幅が広く厚い、首が太い なで肩傾向、首が細い
胸部 扁平、胸板が厚い バストの隆起がある(立体的)
背中 肩甲骨周りの運動量が必要 背中のくびれ(S字ライン)が重要
パターンの急所 背幅と肩傾斜の確保 バストダーツ処理とウエストシェイプ

ユニセックスアイテムにおける「妥協点」と「こだわり点」の設計

では、成功しているブランドはどのようにしてこの骨格差を克服しているのでしょうか。一つの解は、トレンドである「ドロップショルダー」と「ビッグシルエット」の採用です。肩線を本来の位置よりも大きく落とすことで、男女の肩幅の違いやなで肩・いかり肩の差を物理的に隠してしまう手法です。

しかし、高品質なOEMを目指すならば、単に大きくするだけでは不十分です。重要なのは「袖山(そでやま)の高さ」と「アームホールの形状」の調整です。

袖山を低く設定すると、袖と身頃の角度がフラットに近づき、男女問わず腕を上げやすくなります。カジュアルなユニセックスウェアではこの手法が多用されます。しかし、袖山を低くしすぎると、腕を下ろした時に脇の下に余計なシワ(抱きジワ)が溜まり、野暮ったい印象を与えてしまいます。

ここで求められるのが「中間的な原型」の作成です。プロのパタンナーは、メンズ原型の肩傾斜と、レディース原型の前身頃のゆとり分量を計算し、独自の「ユニセックス用マスターパターン」を作成します。例えば、バストダーツを入れずに胸の立体感を出すために、サイドパネルで切り替えて操作したり、生地のバイアス(斜め)方向の伸縮性を利用したりする高度なテクニックを用います。

これからOEMを依頼する場合は、工場側に「どのような原型を使用しているか」を確認し、既存のメンズ・レディースの流用ではなく、ユニセックス専用のパターン設計が可能かどうかを問いかけることが重要です。

OEM発注時の最大の壁「グレーディング(サイズ展開)」の落とし穴

パターンが決まった後に待ち受けているのが「グレーディング」です。これはマスターパターンを拡大・縮小してサイズ展開を作る作業ですが、ユニセックスにおいて最も失敗が多い工程でもあります。

メンズMサイズ ≠ レディースLサイズ? サイズピッチの科学

「メンズのSはレディースのLと同じくらいだろう」という感覚でサイズ設定を行うと、シルエットが崩壊します。これは、JIS規格における「サイズピッチ(サイズ間の寸法差)」の考え方が、男女で根本的に異なるためです。

メンズのグレーディングは、基本的に「身長」と「チェスト(胸囲)」を基準に、全体的に縦横へ拡大していく傾向があります。サイズが上がるにつれて、着丈も袖丈も肩幅も一定の比率で大きくなっていきます。

一方、レディースのグレーディングはより複雑です。女性の体型変化は、身長よりも「横方向のボリューム」の変化が顕著です。特にバスト、ウエスト、ヒップの3箇所のバランス(ドロップ寸)がサイズごとに変化するため、単純な等倍拡大では対応できません。

例えば、メンズのグレーディングルールをそのままレディースに適用してサイズダウンしていくと、ウエストは細くなりますが、同時にヒップも極端に小さくなりすぎてしまい、女性の腰回りが収まらないという事態が発生します。逆に、レディースのルールでサイズアップしてメンズサイズを作ると、着丈や袖丈が足りない「寸足らず」の服になってしまいます。

このように、単純な拡大縮小(等倍グレーディング)は、本来デザイナーが意図したシルエットをサイズ展開の過程で破壊してしまう危険性を孕んでいます。

共通パターンで展開する場合の「グレーディングルール」策定ガイド

ユニセックスブランドをOEMで展開する場合、独自の「グレーディングルール」を策定する必要があります。まず決めるべきは「マスターサイズ」です。

一般的には、「メンズのSサイズ」かつ「レディースのLサイズ」に相当するサイズをマスター(基準)として設定し、そこからプラス方向(メンズM, L)とマイナス方向(レディースM, S)へ展開する手法が推奨されます。この中心点からスタートすることで、極端なサイズになった時の歪みを最小限に抑えることができます。

また、OEMコストの観点からもグレーディングの理解は必須です。グレーディング費用は通常、1パーツあたり数百円から設定されています(例:1パーツ750円〜など)。ポケット、襟、見返しなど、パーツ数が多ければ多いほど、サイズ展開ごとのコストは跳ね上がります。

工場への指示書には、単に「S, M, L」と書くのではなく、各部位のピッチ(差寸)を明記した「グレーディングピッチ表」を添付することが理想です。

例えば、「着丈は2cmピッチ、バストは4cmピッチ、ただし肩幅は1cmピッチに抑える」といった具体的な指示です。特にユニセックスの場合、肩幅のピッチを大きくしすぎると、小さいサイズで頭が入らなくなったり、大きいサイズで肩が落ちすぎたりするため、ピッチを意図的に狭く設定するなどの工夫が必要です。

メンズ・レディース両対応のOEM工場選び、3つの技術的チェックポイント

素晴らしいデザインとパターンがあっても、それを形にする工場の技術力が伴っていなければ、商品は完成しません。メンズとレディース、その両方の特性を理解し、縫製できるOEM工場を選ぶための3つの技術的チェックポイントを紹介します。

1. パタンナー・グレーダーの在籍とCAD環境

まず確認すべきは、OEMメーカー社内に専任のパタンナーやグレーダー(グレーディング担当者)が在籍しているかどうかです。営業担当者が外部のパタンナーに丸投げしている場合、細かいニュアンスの修正が伝わりづらく、トラブルの原因になります。

また、使用しているCADソフトの環境も重要です。日本国内のアパレル業界では、東レACSの「CREACOMPO(クレアコンポ)」や、ユカアンドアルファの「Super Alpha:Plus」などが主流です。これらのソフトは非常に高機能で、高度なグレーディング処理が可能です。

工場側とデータをやり取りする際、DXF形式(アパレル図形交換ファイル)やAAMA形式での互換性があるかを確認してください。互換性が低いと、データ変換時に線が崩れたり、ノッチ(合印)の位置がずれたりするリスクがあります。スムーズなデータ連携は、納期短縮と品質安定の鍵です。

2. 設備環境:厚物(メンズ)と薄物(レディース)の共存

縫製工場の設備にも「得意・不得意」があります。一般的に、メンズウェアはデニムやキャンバス、厚手のコットンなどを使用することが多く、「厚物(あつもの)用」のミシンセッティングが求められます。対してレディースウェアは、シルク、シフォン、薄手のニットなど、繊細な素材を扱う「薄物(うすもの)用」の設備が必要です。

ユニセックスブランドでは、同じデザインで素材を変える展開も考えられます。この時、工場がどちらか一方の設備しか持っていないと、品質にばらつきが出ます。

具体的には、ミシンの「送り歯」や「押さえ金」の種類が充実しているか、針の太さを細かく調整できる管理体制があるかを見ます。さらに、仕上げのプレス機(アイロン)に強力なバキューム機能があるかどうかも重要です。メンズのジャケットをパリッと仕上げるには強いバキュームが必要ですが、レディースのドレープ感を出すには繊細な蒸気コントロールが必要です。両対応の設備を持つ工場は、技術力が高い証拠です。

3. トワルチェック(仮縫い)プロセスの徹底

最も重要なチェックポイントは、「トワルチェック(仮縫い)」の工程を大切にしているかどうかです。コスト削減や納期短縮のためにトワル作成を省略することを提案してくる業者もいますが、ユニセックスOEMにおいてそれは自殺行為です。

トワルチェックでは、実際の生地に近いシーチングを使い、立体的な形状を確認します。ここで必ず行うべきは、男女それぞれのフィッティングモデルによる着用テストです。

トルソー(マネキン)に着せるだけでは不十分です。人間が動いた時の生地の追従性、腕を上げた時の裾の上がり具合、座った時のウエストの食い込みなど、動的なチェックが必要です。信頼できるOEMパートナーであれば、適切なヌード寸法を持つフィッティングモデルの手配や、修正指示に対する的確なアドバイス(例:「ここのダーツを削ると、女性が着た時に胸が浮きますが大丈夫ですか?」など)を提供してくれるはずです。

【ケーススタディ】成功事例と失敗事例から学ぶ仕様書作成

最後に、実際のOEM現場で起きた具体的な事例をもとに、仕様書作成のポイントを解説します。成功事例を模倣し、失敗事例を回避することで、ブランドの信頼性は飛躍的に向上します。

失敗事例:ボタン位置と前合わせ(右前・左前)の混乱

ユニセックスウェアの生産で頻発するトラブルの一つが、前合わせ(プラケット)の仕様です。伝統的に、メンズは「左前(左身頃が上)」、レディースは「右前(右身頃が上)」というルールがあります。

ある新興ブランドは、ユニセックス展開にあたり、全てのサイズで「左前(メンズ仕様)」に統一しました。生産効率を上げ、在庫管理を単純化するためです。しかし、商品を受け取った女性顧客から「ボタンが留めにくい」「違和感がある」というクレームが相次ぎました。長年の習慣による動作の違いは、想像以上にユーザー体験に影響を与えます。

また、ファスナーの仕様にも注意が必要です。メンズライクな大きなスライダー(引き手)はデザイン的に人気ですが、女性の爪を傷つけるリスクがあったり、華奢な手では操作しにくかったりすることがあります。

対策としては、仕様書に「ユニセックス仕様のため左前に統一」と明記するだけでなく、販売ページでもその旨を強調し、顧客の理解を得る努力が必要です。あるいは、コストはかかりますが、サイズによって合わせを逆にするという丁寧な作り込みを選択するのも一つの戦略です。

成功事例:ディテールの共通化と素材による差別化

一方で、成功しているブランドは「パターンは共通、素材で調整」という高度なテクニックを使っています。

例えば、同じオーバーサイズのシャツパターンを使用する場合でも、メンズ向け(またはハードな印象を出したい場合)には、ハリとコシのある高密度のコットンタイプライター生地を使用します。これにより、身体のラインを拾わず、構築的なシルエットが生まれます。

対して、レディース向け(またはソフトな印象を出したい場合)には、落ち感のあるレーヨン混やテンセル素材を使用します。すると、同じパターンであっても、生地が身体に沿って滑らかに落ちるため、女性の丸みのある体型にも美しく馴染み、ドレープがエレガントな雰囲気を醸し出します。

このように、OEM工場と相談して「生地の物性」を利用したフィッティング調整を行うことは、型紙代やグレーディング費用を抑えつつ、ターゲット層に最適化させる賢い手法です。仕様書には、生地ごとの縮率(洗濯後の縮み具合)の違いも考慮し、仕上がり寸法の許容範囲を素材ごとに設定するなどの細やかさが求められます。

まとめ:技術を理解したパートナー選びがブランドの寿命を決める

ユニセックスのアパレルOEMは、単に「メンズとレディースの中間を作る」という単純な作業ではありません。解剖学的な骨格理解、JIS規格を超えたグレーディング戦略、そして素材特性を活かす縫製技術が組み合わさって初めて、着心地の良い製品が生まれます。

安価な工賃だけを売りにする工場ではなく、こうした技術的な対話ができ、ブランドのこだわりを「仕様」として落とし込めるパートナーを選ぶことが、最終的には返品率を下げ、リピーターを増やす最短ルートとなります。品質への投資は、ブランドの寿命を延ばすための生命線です。

メンズ・レディースの衣服OEMでお困りの際はオフィスアイにご相談ください

オフィスアイでは、単なる生産代行ではなく、アパレル構造を熟知したプロフェッショナルとして、お客様のブランド作りをサポートいたします。ユニセックス特有のパターンの微調整から、素材選定、小ロットでの生産まで、技術的な課題を共に解決します。仕様書の作成段階からのご相談も可能ですので、こだわりの服作りを実現したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

シェアする